原価率の改善方法は、原価率を①仕入、②ロス、③価格、④商品ミックスの4方向に分解し、それぞれ別の打ち手で少しずつ下げることです。原価率(売上原価÷売上高)が1ポイント下がれば、その分はそのまま粗利と営業利益に反映されます。定着させるには、月次の確認と棚卸の精度が土台になります。
この記事の結論
原価率は、仕入単価・ロス・売価・商品構成の4要因の「結果」です。まず上がった理由を4方向に分解し、方向ごとに担当と打ち手を決めて、月次で進み具合を確認します。
- 仕入は定期的な相見積もりと条件交渉。値上げ通知には内訳の説明を求める
- ロスは、廃棄・作りすぎ・規格外などを記録することから始める
- 原価上昇分の値上げ(転嫁)と、原価率の低い商品への構成シフトを併用する
- 月次レビューに「仕入単価・ロス額・値上げの進捗・商品構成比」の4行を足して定着させる
- 期末の棚卸の精度が低いと原価率そのものが歪むため、棚卸が取り組み全体の土台になる
前提:原価率は「結果の指標」である
原価率は、仕入単価・ロス・売価・売れた商品の構成という4つの要因の結果として決まります。そのため「原価率が上がった」という事実だけでは打ち手を決めにくく、まずどの要因で上がったのかを分解することが出発点になります。
「原価率を下げろ」という号令だけでは、現場は安い材料に走って品質を落とすか、何も変わらないかのどちらかになりがちです。原価率は目標ではなく、4つの要因を動かした結果として下がるものと捉えると、現場に具体的な行動を頼めるようになります。
もう一つ押さえたいのが計算の仕組みです。売上原価は「期首の棚卸高+当期の仕入高−期末の棚卸高」で計算します。期末の在庫を数え漏らすと売上原価が膨らんで原価率が実態より高く見え、多く数えすぎると低く見えます。
| 業種 | 原価に入る主なもの | 原価率が動きやすい要因 |
|---|---|---|
| 小売・卸売 | 商品の仕入原価(仕入れにかかった運賃を含む) | 仕入単価、値引き・廃棄、売れ筋の構成 |
| 飲食 | 食材費(人件費と合わせたFL比率で見ることも多い) | 食材価格、仕込みの作りすぎ・廃棄、メニュー構成 |
| 製造 | 材料費・労務費・製造経費 | 材料価格、歩留まり・不良、設備の稼働率 |
| 建設 | 材料費・労務費・外注費・現場経費 | 資材価格、外注単価、工期の延び |
月次で商品群別の原価率を確認できる状態(クラウド会計×販売データ)を先に整えると、以降の検討がスムーズになります。仕組みづくりの手順は「原価管理の進め方5ステップ」で解説しています。
4方向の打ち手マップ
原価率の改善は、①仕入(買い方)、②ロス(捨て方・使い方)、③価格(売り方)、④商品ミックス(何を売るか)の4方向に分解します。そのうえで、それぞれ別の担当・別の打ち手で進めることが、実務上の有効な方法とされています。

| 方向 | 主な打ち手 | 最初の一歩 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| ①仕入(買い方) | 相見積もりの定期化、発注ロット・支払条件の交渉、共同仕入や仕入先の分散 | 主要品目だけでも年1回の相見積もり | 経営者・購買担当 |
| ②ロス(捨て方・使い方) | 廃棄・作りすぎ・規格外・盗難・計量誤差の記録と、発注精度の改善 | ロスの種類と金額を毎日記録する | 現場責任者 |
| ③価格(売り方) | 原価上昇分の転嫁、価格の見直し | 原価が上がった商品の一覧をつくる | 経営者・営業 |
| ④商品ミックス(何を売るか) | 原価率の低い商品の販売構成比を上げる | 商品別の原価率と売上構成比を並べる | 営業・販売 |
方向①仕入:相見積もりと条件交渉
相見積もりの定期化(年1回・主要品目だけでも)、発注ロット・支払条件の交渉、共同仕入や仕入先の分散が基本の打ち手です。値上げ通知を「そのまま受ける」のではなく、内訳の説明を求めるだけでも結果が変わる場合があります。
単価だけでなく、仕様や規格も見直しの対象です。お客様が価値を感じていない部分に過剰な品質をかけていないか、包装や配送の頻度を変えられないかを確認すると、品質を落とさずに原価を下げられる余地が見つかることがあります。
方向②ロス:まず記録して見える化する
廃棄・作りすぎ・規格外・盗難・計量誤差など、買ったのに売上にならなかった分を記録します。ロスは記録・見える化を通じて改善につながりやすい領域とされています。日付・品目・数量・理由の4項目だけでも、発注量や仕込み量の見直しにつながります。現場のムダの見つけ方は「7つのムダの考え方」も参考になります。
方向③価格:原価上昇分を転嫁する
原価が上がったときに売価を据え置くと、原価率は上がり続けます。値上げを検討するときは、「粗利の額を守る」のか「原価率を守る」のかで必要な値上げ幅が変わる点に注意します。値決めの考え方は「利益率を上げる値決めと商品構成」で詳しく整理しています。
計算例:原価が10%上がったときの値上げ幅
例えば、売価1,000円・原価650円(原価率65%)の商品で、原価が10%上がった場合です。原価の上昇額は650円×10%=65円で、新しい原価は650円+65円=715円です。
粗利の額を守るなら、売価は1,000円+65円=1,065円(6.5%の値上げ)で足ります。原価率65%を守るなら、715円÷65%=1,100円(10%の値上げ)が必要です。
方向④商品ミックス:何を売るかを変える
原価率の低い商品の販売構成比を上げます。同じ売価でも、何が売れたかによって全社の原価率は変わり得ます。ただし、原価率が低くても単価が小さい商品ばかりでは粗利の額が伸びません。商品ごとに原価率と粗利額、売れる数量を並べて、おすすめする商品を決めます。
モデルケース:4方向で1ポイントずつ拾う
説明用のモデルケースです。数値は構造を説明するための仮定で、実在の会社の数値ではありません。値上げ後も販売数量は変わらない前提で計算しています。
計算例:売上8,000万円・原価率65%の食品系の会社
例えば、売上8,000万円・原価率65%(原価5,200万円)の会社で、次の打ち手を組み合わせたとします。
①主要食材の仕入単価を交渉で下げ、原価の1%を削減:5,200万円×1%=52万円
②廃棄ロスの記録と発注精度の改善で、原価の0.5%を削減:5,200万円×0.5%=26万円
③看板商品を3%値上げし、原価は変わらず売上が120万円増加
①〜③の利益改善は、52万円+26万円+120万円=198万円です。原価は5,200万円−52万円−26万円=5,122万円、売上は8,000万円+120万円=8,120万円となり、原価率は5,122万円÷8,120万円=約63.1%に下がります。
④高粗利商品の構成比を5ポイント引き上げると、さらに上積みされます。例えば原価率が20ポイント低い商品へ売上の5%分を移せる場合、8,000万円×5%=400万円、400万円×20%=80万円の粗利改善になります。
一つひとつは小さな改善でも、組み合わせると①〜③だけで原価率は2ポイント近く下がり、年200万円規模の利益差になります。原価率改善は一発の大技ではなく、4方向の小技の積み上げによって実現される場合があります。
定着の仕組み:月次レビューに4行足すだけ
改善を一過性にしないコツは、月次の数字に「仕入単価の動き・ロス額・値上げの進捗・商品構成比」の4行を足し、毎月確認することです。月次の数字の見方は「月次の管理会計の進め方」で解説しています。
| 追加する行 | 毎月見る内容 | データの出どころ |
|---|---|---|
| 仕入単価の動き | 主要品目の単価の前月比・前年同月比 | 仕入先の請求書、仕入データ |
| ロス額 | 廃棄・値引き・規格外の金額と理由 | ロスの記録表、POSの値引きデータ |
| 値上げの進捗 | 改定済みの商品と、改定後の売上・数量の変化 | 販売データ |
| 商品構成比 | 原価率の低い商品の売上構成比 | POS・販売管理データ |
集計はPOS・仕入データからAIなどで自動化できるため、人の仕事は月1回「どの方向に手を打つか」を決めることに絞られます。季節で売上や仕入価格が動く業種では、前月比より前年同月比で見るほうが傾向をつかみやすくなります。
棚卸の精度が取り組み全体の土台
期末の棚卸の精度が低いと、原価率そのものが歪む可能性があります。月次でも主要品目だけは月末在庫を押さえ、期末は実地棚卸で確定させます。期末在庫の計上漏れは売上原価を過大にし、利益を少なく見せるため、税務調査でも確認されやすい項目です。
在庫の数え方と管理の基本は「在庫管理の基本」にまとめています。
原価率をどう分解し、どの数字を毎月見るかは、業種と販売データの持ち方で変わります。初回無料で整理できます。
無料で相談する原価を下げる設備投資に使える税制・補助金は?
省力化の設備や在庫管理・POSのシステムに投資して原価を下げる場合、税制や補助金で投資の負担を軽くできることがあります。設備を決める前に、使える制度と時期を確認しておきます。
| 制度 | 内容 | 期限・時期 |
|---|---|---|
| 少額減価償却資産の特例 | 青色申告の中小企業者等は、40万円未満の資産を年300万円まで一括で損金(経費)にできる | 2026年4月1日以後の取得から40万円未満(それまでは30万円未満)。2029年3月31日まで |
| 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画の認定を受けた設備投資は、即時償却か税額控除10%(資本金3,000万円超は7%) | 2027年3月31日までの取得・事業供用 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 人手不足に対応する省力化の投資を支援 | 第8回の受付は2026年9月18日〜10月16日17時 |
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | 在庫管理などのITツール導入を支援。通常枠は5万〜450万円・補助率1/2 | 第6次の締切は2026年10月30日17時 |
補助金は後払い、税制は期限に注意
補助金は採択されても入金は事業の実施・報告の後になるため、いったん全額を自己資金や借入で支払う前提で資金繰りを組みます。2027年3月31日が期限の中小企業向け税制(経営強化税制など)は、延長がまだ決まっていません(令和9年度税制改正で決まる見込み)。
札幌・北海道の会社で原価率が動きやすい要因
北海道の会社では、全国共通の要因に加えて、人件費・季節・物流の3点で原価率が動きやすくなります。どれも4方向のどこで手を打つかを決める材料になります。
北海道の最低賃金と季節要因
北海道の最低賃金は、2026年10月1日から1,131円になりました(前年の1,075円から56円、5.21%の引上げ)。製造・建設の労務費や、飲食のFL比率に直接響くため、価格への転嫁と省力化をセットで検討します。
冬の暖房・燃料費は、製造業では工場の製造経費として原価に入ることがあります。観光や農水産物の旬によって売上と仕入価格が季節で大きく動く業種では、月次の原価率を前年同月と比べ、冬の費用は年間の予算に織り込んでおきます。
道外から仕入れる商品や資材は、運賃の比重が大きくなる場合があります。仕入れにかかった運賃は商品の原価に含めて考えるため、発注ロットをまとめる、配送の頻度を見直すといった「買い方」の打ち手が効きやすい領域です。
当事務所の支援の進め方
原価率の分解の設計と、決算数値との整合は、当事務所が税務顧問にとどまらず伴走している領域です。次の流れで、数字づくりから打ち手の選定までを支援します。
- 現状を把握する直近の決算書と、主要商品の売価・仕入単価から、原価率の水準と推移を確認します。
- 分解の設計をする商品群の分け方と、4方向それぞれで毎月見る指標を決めます。
- 月次レポートをつくる仕入データとPOSのデータから、原価率の要因分解レポートを毎月作成します(集計はAIで自動化)。
- 月次面談で打ち手を選ぶ原価率が上がった月は、仕入・ロス・価格・構成のどれが原因かを確認し、次の打ち手を一緒に決めます。
- 決算・税務と整合させる棚卸や原価の計算を決算に正しく反映し、税務上の処理まで一貫して確認します。
よくある質問
原価率の目安はどれくらいですか?
業種によって大きく異なります(小売・飲食・製造・建設で構造が別物です)。他社比較より、自社の月次推移と「上がった理由の分解」のほうが行動につながりやすいと考えられます。
仕入先との関係が崩れるのが心配で交渉できません。
交渉は値切りだけを意味するものではありません。内訳の説明を求める、ロット・支払条件で互いに得な形を探る、一部品目だけ相見積もりを取るなど、関係を保ちながらできる打ち手から始めることを検討してください。
人件費は原価に入れて考えるべきですか?
業種によります。製造・建設では労務費が原価の柱になることが多いです(建設業会計の基本)。飲食ではFL比率(食材+人件費)で見るのが実務的とされています。自社の管理目的に合わせて定義を固定することをおすすめします。
相談には何を用意すればよいですか?
直近の決算書と、主要商品の売価・仕入単価が分かる資料をご用意ください。月次の試算表やPOSの売上データがあれば、初回から要因の分解まで踏み込んで確認できます。
まとめ
原価率は仕入・ロス・価格・ミックスの4要因の「結果」なので、まず分解し、仕入は相見積もりと条件交渉、ロスは記録から始め、値上げと高粗利商品への構成シフトを併用します。小さな改善の積み上げが年単位では大きな利益差になるため、月次レビューに4行を足して定着させ、その土台として棚卸の精度を高めましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(北海道の最低賃金、少額減価償却資産の特例の見直しを反映)
